2025.11.11唾石とは
前回、大唾液腺で作られた唾液が、ワルトン管とステノン管という2つ導管を通って、
お口の中に分泌される。わたくし的には、それがあたかも、北欧の海底でガスを運ぶパイプラインみたいに思えるというお話でした。(かえって分かりにくい?)
唾石とは、唾液腺の導管内に結石が形成される疾患です。
唾液が出る管に石ができてしまうと、唾液が出にくくなったり、つまってしまいます。
しかし、唾液腺では唾液が産生されるので、導管内で唾液が停滞して痛みが出たりします。
食事をするときには唾液の分泌が普段より増えるので、より痛みが強くなります(唾仙痛)。
また、導管内に唾液が流れないので、細菌感染も生じます。
治療としては、唾石の大きさや生じた場所にもよりますが、自然排出を待ったり、手術で取り出すときもあります。
疑わしい時は、まずはレントゲンを撮影したりして、必要があれば、適切な検査や手術をできる病院への紹介を行います。
2025.10.16唾液腺とは?
今回からは、お口の中の、歯とか歯ぐき(歯肉)以外の部位の病気について取り扱っていきます。
まずは、唾液腺についてです。
唾液腺は、唾(唾液)を作る臓器です。私たちのお口の中は、常にしめっていますが、
唾液腺から唾液が分泌されているためです。
唾液腺には、小唾液腺と大唾液腺とがあります。
小唾液腺は、くちびる(口唇)、ほっぺた(頬粘膜)うわあご(口蓋粘膜)等あります。
イメージ的には、口唇の中にブドウの房みたいなのがいっぱいあって、ひとつひとつのブドウの房からストローが口唇表面に唾液を分泌しているかんじです。
大唾液腺は、顎下腺・舌下腺・耳下腺と3つあります。場所は、名前の通りですが、
顎下腺と舌下腺で作られた唾液は、下前歯の裏側のぽつんとしたところ(ワルトン管)から分泌されます。
耳下腺で作られた唾液は、左右の頬っぺたの上の6歳臼歯の高さにある
ぽつんとしたところ(ステノン管)から分泌されます。欧州にある海底のガスを輸出するパイプラインみたいなかんじでしょうか、、、
次回は、唾液を分泌する唾液腺の病気についてです。
2025.09.09骨粗鬆症のくすりと歯科治療
前回は、骨粗鬆症のくすりによる顎骨骨髄炎・壊死の報告のお話でしたが、
歯科治療を受ける際に、くすりの種類によっては注意が必要です。
BP(ビスホスホネート)製剤やDmab(デノスマブ)製剤の服用歴がある場合、
抜歯などの観血的処置(外科的に血が出たりする処置のこと)を行うと、
顎骨骨髄炎・壊死が生じる可能性があります。
また、抜歯などの観血的処置をしなくても、歯周病などで弱っている歯をおいておくと同様に、顎骨骨髄炎・壊死になる可能性があります。
歯科治療を受けるときの対策としては、
①歯科治療を受ける際には、おくすり手帳を提示していただく。また、点滴等はおくすり手帳には記載されないこともあるので、口頭で、整形外科の先生からの指示を歯科医に教えていただく。
②骨粗鬆症のくすり服用を開始する前に、必要な歯科治療を終わらせる。
③定期的に歯科医院に通院して、歯の健康を維持する。
④どうしても抜歯などの観血的処置が必要な場合は、抜歯時点滴や入院が可能な病院と連携する。(それでも100%顎骨骨髄炎・壊死が生じないわけではありません。)
骨粗鬆症のくすり服用は、骨粗鬆症による病的骨折予防などからもちろん必要なことです。
また、くすりを休薬しても、抜歯などの観血的処置時、顎骨骨髄炎・壊死の発症リスクは軽減しないという報告もあることから、歯科治療時は、歯科医と相談して治療方針を決めることがとても重要です。歯科治療時には、おくすり手帳を必ず持参されてください。
2025.08.15骨粗鬆症のくすりと顎骨壊死について
これまで骨粗鬆症とそのくすりをみてきましたが、
今回は骨粗鬆症のくすり服用と歯科との関わりをみていきます。
2003年に、骨粗鬆症のくすりBP(ビスホスホネート)製剤を服用している患者さんの顎骨壊死(あごの骨が死んでしまうこと)が報告されました。その後、用量に関係なくBP製剤やDmab(デノスマブ)製剤服用による顎骨骨髄炎・壊死が報告されてきました。
(薬剤関連性顎骨壊死 : MRONJ medication-related osteonecrosis of the jaw)
現在では、BP(ビスホスホネート)製剤やDmab(デノスマブ)製剤の服用歴があり、8週間以上持続して、口腔・顎・顔面領域に骨露出を認めたり、瘻孔(膿の出口)をみとめることが診断基準となっているようです。
どういった症状かというと、顎骨(あごの骨)が、皮膚や粘膜の中から露出したり、赤みがある腫れや痛みがでます。また、顎骨より膿が出てくる状態になってしまい、その症状が長期にわたります。それに伴い、病的骨折がみられることもあります。
骨粗鬆症のくすりによっては、口の中や顔の骨に影響を及ぼすことがあるようです。
しかも、8週間以上、もっと長期的にその症状が続くのはかなり大変なことです。
骨粗鬆症のくすりの服用は、もちろん骨粗鬆症の患者さんには必要なことですが、歯科に影響を及ぼす可能性があることがわかったので、次回は歯科治療における注意点についてみていきます。
2025.07.08骨粗鬆症のくすり
今回は、骨粗鬆症のくすりについてです。
歯科通院中の患者さんで、既に服用されている方もおられるかもしれません。
私たちの骨は、古い骨が溶かされて(骨吸収)、新しい骨が作られています(骨形成)。
このバランスが崩れ、骨吸収がすすむと骨が減っていき、骨粗鬆症になるのです。
骨粗鬆症のくすりには、作用機序で分類すると、
①骨吸収を抑えるくすり
カルシトニン製剤、ビスホスホネート(BP)製剤、 抗RANKL抗体(デノスマブ)、
SERM(塩酸ラロキシフェン、バゼドキシフェン酢酸塩)
②骨形成を促すくすり
副甲状腺ホルモン (テリパラチド)
③骨に必要なビタミンおよびカルシウム
カルシウム製剤、活性型ビタミンD3製剤、 ビタミンK2製剤
などが、あります。
次回は、骨粗鬆症のくすりと歯科治療との関わりについてです。
2025.06.23骨粗鬆症とは
すこし前から、歯科治療において骨粗鬆症の薬を服用しているかを確認することが重要になっています。
吹田市においても、医師会・歯科医師会・薬剤師会が骨粗鬆症の薬を服用している患者さんの抜歯等治療について、協議を行ったりしております。
そこで、今シリーズでは、骨粗鬆症と歯科治療について取り扱っていきます。
今回は、骨粗鬆症についてです。
骨粗鬆症とは、なかなか難しい漢字ですが、骨の量が減ることにより骨が弱くなって、骨折しやすくなるという病気です。日本には約1000万人以上の患者さんがおり、高齢の方に多いようです。
骨粗鬆症になっても、痛みなどはないそうですが、ちょっと転んだりすることで骨折しやすくなります。脊椎(せぼね)や大腿骨頚部(太ももの付け根)を骨折すると、痛くて動けなくなります。その結果、背中や腰が丸くなったり、足腰の筋力低下により寝たきりになってしまうようです。
人の体の骨は生きていて、新しく作られること(骨形成)と溶かして壊されること(骨吸収)を繰り返しています。骨粗鬆症は、このバランスが崩れることで、骨がスカスカになってしまいます(骨粗鬆)。骨粗鬆症は、特に閉経後の女性に多くみられることから、女性ホルモンの減少や老化と関わりが深いと考えられています。
公益社団法人 日本整形外科学会より
次回は骨粗鬆症のお薬についてです。
2025.05.26食べたらすぐ磨く?30分たってから磨く? 後編
前回は、ご飯を食べたらお口のPHが酸性に傾いて、歯のエナメル質が溶け出す現象(脱灰)のダメージをできるだけ少なくするために、すぐ歯磨きをする必要があるというお話でした。
ただ、数年前からテレビ・雑誌で、食後30分経過してから歯磨きをしたほうがいいという情報が出回ったと思います。今回はそこに触れていきます。
これらの情報のもとになったのは、ある報告でした。
その報告とは、むし歯ではなく酸蝕症(酸性の飲食物により、数本の歯が溶けてくる症状)の実験として、歯の象牙質のかけらを酸性の炭酸飲料水に90秒間浸した後、歯みがきの開始時間の違いによって、酸の浸透具合に差が出ることを調べた論文です。
その論文では、酸性の飲食物を摂取した場合、30分は歯磨きをやめたほうがいいという結論を出しています。
ただ、実際の口の中は、まず、歯の象牙質が露出していることはありません。
歯の表面はエナメル質に覆われています。かぶせが脱離していたり、むし歯を放置している場合は当てはまるでしょう。また、歯の表面は少なからず唾液が湿っており、酸性飲食物もそこそこ薄まるのです。
以上のことから、実験の状態がお口の中で再現されることは、稀だと考えられています。(日本小児歯科学会HPより)
この論文は、酸蝕症の患者さんを心配して、その患者さんに適切な歯磨きを提案するために、実験や考察をしたと思いますが、その結論の一部分が切り取られたことにより、食後30分は歯磨きをしないほうがいいという情報が出回ったようです。
ということで、「食べたらすぐ磨く」を今まで通り実践していきましょう!
私もすぐ磨きます、、、
2025.04.17食べたらすぐ磨く?30分たってから磨く? 前編
ご飯を食べたら、歯磨きをすると思いますが、
すぐ磨いたほうがいいのでしょうか?
30分ほど時間をおいてから磨いたほうがいいのでしょうか?
今回は、ご飯を食べてからいつ歯磨きをするべきか?についてのお話です。
そもそも、ご飯を食べると歯磨きをするのは、むし歯を予防するためだと思います。
他にも、歯肉炎や歯周病を予防するためでもあります。
ご飯を食べると、むしば菌ミュータンスがショ糖(スクロース)を代謝して、酸を作り出します。それにより、通常PH7.0に保たれているお口の中が、酸性に傾いていきます。(その推移具合をステファンカーブといいます。)
PHが5.5.より下になると、歯のエナメル質が溶け出します。(脱灰)
歯磨きや唾液の緩衝作用により、お口の酸性度が中性にもどると、唾液中のカルシウム等により、溶けたエナメル質が修復されます。(再石灰化)
むし歯になるかどうかは、この脱灰と再石灰化のバランスが重要です。
つまり、脱灰ができるだけ少なければ、むし歯になりにくいわけです。
それで、食べたらすぐ歯磨きをしましょう!と言われているのです。
それでは、数年間にテレビや雑誌で言われだした、食後30分は歯磨きをしてはいけないという話はどういう根拠で出てきたのでしょう?
その話は、次回の後編に続きます。
2025.03.06インプラント
歯が喪失した場合に、歯を入れる方法(補綴)として、
ブリッジ・入れ歯のお話をしてきましたが、3番目はインプラントのお話です。
インプラントは、歯が喪失した歯槽骨にチタン製のネジみたいなもの(インプラント体)を植え込みます。
数か月すると、インプラント体と歯槽骨が生物学的にくっつきますので(オステオインテグレーション)、
そのあと、支台(アバットメント)をたてて、かぶせをします。
ただ、ここでもんだいなのが、歯が喪失するケースでは、
もともと歯周病で歯槽骨が吸収している場合が多く、
また、歯が喪失してから時間が経つと歯槽骨も吸収していくことがあるため、
インプラント体を植立するのに十分な歯槽骨がないことが多いのです。
そのため、インプラントをする前に、歯槽骨を増やす処置としてGBR(Guided Bone Regeneration)を行います。
インプラントと同様、局所麻酔での30分ほどの処置なのですが、
骨の再生なので、半年~1年程度の治癒期間が必要です。
以上のことから、インプラントをする場合、治療期間が1年~1年半かかることが多いです。
また、インプラントを植立した後、歯みがきのメンテナンスが悪いと、
インプラント周囲炎(歯周病のインプラント版)になってしまし、植立したインプラントがぐらぐらになり、
抜去することも考えれらます。
そうならないためにも、インプラントのメンテナンスはずっと継続的に行い、
末永く保つようにしていきたいものですね。
2025.02.20義歯(入れ歯)
前回は、歯がなくなった時にブリッジをする話でしたが、
今回は、義歯(入れ歯)をする話です。
義歯(入れ歯)って実はいろいろなパターンがあります。
一本だけ歯がなくなった状況(部分床義歯)や、すべての歯がなくなった状況(全部床義歯)など様々です。
歯が残っっている状況では、金属のわっか(鈎、クラスプ)で歯に引っ掛けたりします。
歯がない状況では、義歯の床を歯ぐきに吸着させます。
義歯全般の特徴としては、取り外しができる分、取り外してのお手入れが必要であったり、
食べるものによっては、動いてたり、外れることもあります。
前回のブリッジと比べると、隣の歯を削らないことが利点といえるでしょう。
歯がなくなった場合は、歯医者の先生とよく相談されて、御自分にあった方法を選択してください。